国語読解教室へようこそ 6

誰にも聞けない国語の素朴な疑問にお答えします!
それが、「国語読解教室へようこそ」です。

さっそくご質問をいただきました。ありがとうございます!
港区在住の黒くまさん(仮名)からの質問です。
◎ 象徴、情景描写、暗示について教えてください。

象徴というのは、
あるものごとを具体的なもの(シンボル)で表現する技法をいいます。
よく例として出されるのは「ハトは平和のシンボルだ」ですね。
中学受験国語でも出題があります。平成14年度開成中/大問二/問四
/薄井ゆうじ「飼育する少年」

情景描写というのは、
風景+心情=情景
で紹介していますが、
正確には象徴情景法というものであり、
登場人物の心情を情景描写によって象徴的に描く表現技法のことです。
芥川龍之介「トロッコ」の
「両側の蜜柑畑に、黄色い実がいくつも日を受けている」という表現がこれにあたります。
ここでは、登場人物の心地よさ、うれしさを表現しています。
「国語読解教室へようこそ 4」でも紹介した、
平成17年度桐朋中/大問一/問九/佐藤雅彦「マック」
をはじめとして、中学受験国語ではよく出題される単元ですね。

暗示というのは、
これから起こるできごとをそれとなく示す表現技法のことです。
「学校からの帰り道、とつぜん靴ひもが切れた」というものです。
これからよくないことが起こることを予告しています。
小6春期国語のテスト演習で扱った、
椰月美智子「しずかな日々」もこれですね。
セミが各所に登場してくるのですが、
セミが登場すると数行後に登場人物の心情が変化しています。
登場人物の心情の変化を予告するという意味で、暗示といえましょう。

象徴、情景描写、暗示とも
気づきにくいため、苦手にしている子も多いですが、
まとめて
「目に見えないもの」を「目に見えるもの」で表現する技法
ととらえてみてはどうでしょうか。

象徴は、
「平和」(=目に見えないもの)を
「ハト」(=目に見えるもの)で

情景描写は、
心地よい気持ち(=目に見えないもの)を
黄色い実がいくつも日を受けている、
両側の蜜柑畑の風景(=目に見えるもの)で

暗示は、
これから起こるできごと(=目に見えないもの)を
「靴ひもが切れた」こと(=目に見えるもの)で

それぞれ表現しているととらえるのです。

このようにとらえることは、文章によってはほとんど重なり合っているものもあることにも合致しています。
さきほどの「しずかな日々」も、
登場人物の心情の変化を予告するという意味では暗示ですが、セミという風景に心情(の変化)を読み込んでいるという意味では情景描写ですし、セミが登場人物そのものを表現しているという意味では象徴ともとれます。

もうお気づきでしょうが……
「目に見えないもの」を「目に見えるもの」で表現するということは、
もうすでに学習していますね。
そうです。心情ですね。
登場人物の心情(=目に見えないもの)を
登場人物の言動など(=目に見えるもの)で
表現していますね。

物語文では
「目に見えるもの」から「目に見えないもの」を読み取る力が
試されているのです。