マンガは取り上げるべきか否かについての独り言

一昔前ほどでないにせよ、それでも時々保護者の皆様からご相談いただくのが、

「うちの子マンガばっかりなんですが、マンガとりあげたほうがいいのでしょうか」

といったもの。

私が子供のころにもマンガ禁止の家庭はちらほら見られました。自分が両親に感謝したい多くのことの1つは、小さい頃にマンガを読むことを一切制限しなかったことです。というわけで、野村個人の意見としては、

「マンガは大いに読ませるべき」です。

心情と人の表情や、出来事を結びつけ考える能力は人が社会で生きていく中で最重要なものです。そして、それはもちろん人生経験の中の実体験の積み重ねから得ていくものです。漫画はこれを補完します。よくできたストーリーと、それに結びつく立体感をともなう描写、すんなりと読者を引き込み、擬似的に多くの「表情と心情の結びつきを知る経験」や「情景からストーリーを読み取る経験」を与えてくれます。

マンガから得るものは本当に多いと思います。

「漫画ばっかり読んでると、活字から景色や気持ちを想像できなくなる」
といった声を聞きますが、嘘ですね。

文章から浮かぶ景色が漫画の絵の「押し付け」になっていて読者の想像力が鈍るなんてよく聞きますが、人が文章から思い浮かべる絵や景色だって結局は自分が過去に見たものです。まったくの想像・創造の景色なんてありえません。

百歩譲って、たしかに文章から自分で、自分だけの景色を思い浮かべる(思い出す)ことが、必要だとしましょう。たしかに、活字から情景を想像するのは面白いです。

結局行き着くところは「漫画がだめ」なのではなくて、「漫画ばっかり」がだめなのかなと。

で、堂々めぐった独り言ですが、最初に書いた「よくある相談事」への回答としては、必要に駆られてどうしても「字ばっかり」の本を読ませたいならば、生徒がのめり込んでしまうような読書体験をいかにしてお膳立てするかを考えるべきでしょう。漫画を取り上げるのではなくて。

(字ばっかりの本も加齢とともに絶対読むようになりますよ。中学受験等の事情さえなければ、自分で読むようになるまでほっとくのが一番です。)