国語読解教室へようこそ 7

誰にも聞けない国語の素朴な疑問にお答えします!
それが、「国語読解教室へようこそ」です。
ご質問をいただきました。ありがとうございます!
長野県北佐久郡軽井沢町在住のモモンガさん(仮名)からの質問です。
◎ 論説文が難しくて読めません。どのようなことに気をつけたらいいですか?

論説文の著者は、
主張(言いたいこと)を、
さまざまな形に「言いかえ」をしたり、
対照的なものごとと「対比」をしたりして、
読者に伝えようとしています。

とすれば、この「言いかえ」「対比」を手がかりに
仮説をたてながら、読みすすめていくことが
必要かつ十分な読解法といえましょう(仮説思考リーディング)。

さっそくロジム国語本科で使用しているテキスト
5国上の第3回発展問題
を例にこの読解法をみてみましょう。

読みはじめるとすぐに、
外国人⇔日本人
という定番の対立軸がみつかります。
ここで仮説を立ててみましょう。
〈外国人と日本人をくらべて、どちらかに勝たせるんじゃないか……〉
というくらいの仮説でいいですよ。
最初の仮説が正しいとはかぎりません。
1つの仮説を立てたら、
<これでいいのか……ほかにとるべき対比はないか……>
などなど、
たしかめながら読み進めていきましょう(仮説に対する検証ですね)。
この「たしかめながら」というのがキモです。
漫然と字面だけを追いかけるだけの状態に陥ることを防止します。

まず日本人のほうは、日本文化の伝統から論じられています。

日本文化の伝統=背後にある実体を重視=表情、全体のふんい気など

外国人はというと、
23行目に(日本人は)「ことばによるコミュニケーションについて、あまり関心を払うことがなかった」、
26行目に(日本人は)「ことばなどに頼らず」、
31行目に「日本人は、ことばのみに頼ったコミュニケーションはしない」とあるので、

外国人=ことばのみ

とわかります。
ここが対比のいいところです。
はっきり書いていないことも、反対の立場の記述から推論することができるのです。

A外国人(ことばのみ)⇔B日本人(全体のふんい気など)

対比がここまでしっかりしていれば、これできまりでしょう。

対比の軸がきまったら、次は
<主張(言いたいこと)はなにか>
さがしながら、読み進めましょう。
やはりここでも仮説を立てると、攻めながら(積極的に)読んでいくことができます。

2つの大きな対立軸を出したということは、
どちらかの見解をとることは多いでしょう。
ひとまず
<勝つのはB日本人(全体のふんい気など)だろう>
と仮説を立てて読み進めていきます。

41行目「日本人独特のコミュニケーションに対する態度は、外国人にはほとんど通用しない」、
53行目(話さなくてもわかるという態度は)「心の断絶が生まれたりします」、
とあるので、A外国人の勝ちかな……と思いきや、
59行目「日本人は、けっしてコミュニケーションがへただということではありません」
とも書いてあり、B日本人も負けてないぞと思わせる、いい文章です。
(どっちなんだろう、わくわくしながら読みたいものです)

終盤戦……
62行目「コミュニケーションの基礎は、……」
大きな抽象論が急に出てきました。
いよいよですね。

結論は
コミュニケーションの基礎
=心と心のふれあい
=Bを土台にしてAも身につけよう
という折衷(せちゅう)的な主張でした。

折衷というのは、
異なる意見のいいところをとり合わせることをいいます。
論説文においては、対比の軸のどちらかにころぶ文章だけでなく、
このような折衷的な文章も多いです。

実は……
論述が対立軸を行ったり来たりするのは、折衷的な文章の特徴です。
知っておくと、役立ちますよ。

%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA.jpg