手の届くところに

6年生は3回目の合不合判定テストが終わりました。志望校別の結果も出そろい、過去問演習も佳境に。楽勝ムードからあと少しまで。各自がそれぞれの目標に向かってがんばっています。
大学受験で考えれば、数学、現国、地理、歴史、公民、物理、化学、地学、生物という国立大学もびっくりの9科目で実施される中学入試。出来ない部分の方が多いのは当然です。
焦ってくる時期に保護者の方向けアドバイス。

この時期、勉強のお手伝いは「覚えること」に絞ることです。「覚える」というのは、勉強の中で最も結果を出しやすい作業です。子供たちは、授業や試験の中で嫌というほど「気付けない」という壁にぶつかっています。これは精神的に本当につらく、しかもなかなか超えられないものです。ご家庭で、この力をつけようとすると保護者の方は必ず「なぜ出来ないの?」という思いが強くなりトラブル発生です。「覚える」という量で勝負できる部分をいかに楽しくするか。これはご家庭でも取り組みやすい部分です。
これに関連して、模試や過去問の結果についても、「覚えれば出来る」という部分にのみコメントすることです。「なぜ気付かないの?」「なんでわからないの?」「なんでミスするの?
」非常に酷です。「いつものテキストに書いてあることを覚えれば出来た」という位、達成しやすい課題を与えてあげれば、成功のイメージも持ちやすく、意欲も湧くというものです。

準備に費やせる時間が少なく、持っているもので大きく差がついてしまうのが現実です。だからこそ、保護者の皆さんや講師が意識して
「努力したら成果が出る。さぼれば失敗する。」
フィールドにおいてあげる必要があります。

今日の社会のテストで、授業でまとめた内容がそっくりそのまま出題されました。テスト前要復習という指示まで出していました。さぼった数名は間違えていました。この部分はしっかり叱咤するところです。

以上は、精神論だけではなく実はかなり現実的な戦略の話でもあります。本人の記憶力と残された時間、そして出題傾向から換算して「覚えさせる」ことで上積みできる点数が現実的に期待できる「伸び」です。「覚える」とは理科、社会などだけでなく、算数の典型問題なども含まれます。この部分の鍛錬を怠ったチャレンジはもはや他力本願、しっかり取り組んだ上でのチャレンジは実は現実的だということです。

試験では「覚えてきましたか?」「やれといわれたことをあなたはやりますか?」と問いかけてくる問題が少なくないですから、「残された時間で効率よく得点力を高めるためには?」と問われれば、「先生が覚えた方がよいと言ったものを覚えることに全精力を注ぎなさい。」と答えます。

ちなみに私自身は試験のために覚えるという作業は大嫌いです。覚えるものを少なくして、時間をかけてでも予想したり導き出すほうが好きです。興味のないことでも暗記しようと思うほど、試験に合格したいと思ったこともありません。だから、子供たちに声高に暗記を奨励したりはしないので悪しからず。ただ、最近子供に無茶な要求をしている保護者の方もいらっしゃるのでこのアドバイスは是非参考にして頂きたいと思います。

それにしても中学受験の科目数や範囲はなんとかならないのでしょうか。広すぎて、浅すぎる。中学入学後の難しい勉強に耐える力を見るということであれば、好きで得意ないくつかの分野をどれだけ深掘れるかという視点で見ても良いと思います。私は、効率よく、合格点に届くように調整された学力で得られるものなんて合格証書だけだろうと思っています。