「やるべきことに取り組めずに不規則発言で授業を荒らしてしまう」という行動の種は思っているよりも多くの生徒の中にあります。
やるべきことに自信がないために、自信のある関係のない話題で手っ取り早く先生やクラスメイトの気を引きたい、目立ちたい、認めてもらいたいという思いです。
不規則発言でそういったことに成功すると、本人はどんどん気持ちがそちらに引っ張られてしまいます。授業中に他人の話はほとんど耳に入っていない状態で、「自慢話や目立つ発言をできるタイミング」「人の揚げ足をとるタイミング」を必死に探してしまいます。
不規則発言をしてしまっている生徒の場合、すでに本人に成功体験として強く残っています。休み時間の会話を観察すると非常にわかりやすいです。友人の話に対して、あまり関係のない自慢話をかぶせています。
「荒らしてやろう」という図太い精神があるわけではありません。むしろ「自信がない」という状況が背景にある逃避行動なので、面と向かって咎められるととたんに元気がなくなってしまいます。
目の前のことができない
でも存在を認めてもらいたい
手っ取り早く認めてもらえることをしよう
年齢特有というよりも、個別の性質に近いです。大人でもいますよね。
「目の前のことに粘り強く取り組んで、自分の実力を伸ばす」という姿勢を身につける必要があります。むしろ指導の最優先事項だと捉えてもよいでしょう。
「しかって禁止する」というのは、表面的な授業運営はうまくいきます。一見静かになり、講師が説明しやすいからです。しかし不規則発言を咎められて一見おとなしくなっても、自分で考えることを放棄したままです。「不規則発言で目立てないけれど、自分で考えたり発言して失敗したくはない」という思いです。塾で静かになっただけで、今度は学校や家で塾でのうっぷんを晴らすだけです。昔から学校や家で塾の武勇伝を5割増しで話してしまう子多いのです。
ですから「不規則発言で目立つ」ことよりも「目の前のことにじっくり取り組むこと」「間違っていても問題に対してしっかり発言すること」が価値があるのだと理解することを講師・保護者の目標にすべきです。保護者と連携する必要があります。
不規則発言は思考の放棄に近いので、この部分の指導がうまくいけば生徒の考える力も知識の吸収力も飛躍的に伸びていきます。この成功体験こそ、大人がフォローしてあげなければ得られないものです。少人数の塾や保護者との関係の中で可能なものです。
モグラ叩き式に個別対応するだけでなく、ことあるごとに(毎回の授業冒頭や授業終了のタイミングでも良いくらいでしょう)「自分を高める上でもっとも大事なこと」として説明・確認していきましょう。そして、「地味でもしっかり考えている」「間違えていても問題に正面から取り組んだ上での発言」を積極的に全員の前で評価していきましょう。
もし、不規則発言で目立っていたタイプの子が「黙ってしっかり考えた」「質問をした」などの最初の一歩を踏み出せたら、大きく褒めてあげてください。そもそも、自信のない生徒ですから、その評価に背中を押されて変わっていくはずです。この点を保護者の方とも共有して接してもらえることが大事です。
不規則発言は連鎖します。どんなにベテランの講師のクラスでも不規則発言まみれになる可能性を常に抱えています。どの生徒も抱えている不安と承認欲求の裏返しだからです。「怖い一面を出して、表面的に静かにさせる」という運営から一歩進んで、子供達の意識改革に取り組んでいきましょう。
最後にもう一度確認です。
(1)
全員に対して
・関係のない話題で盛り上げる必要はないし、自分が損する行動であること
・問題に集中できることは、解けるということと同じくらい価値があること
・「わからない」「間違っている」発言も貴重で価値があること
を毎回確認する
(2)
「集中して取り組めた」「間違えていても問題に関して発言した」という不規則発言とは逆になる行動を大きく評価する
少人数ですのでメッセージは伝わりやすいはずです。生徒ががらりと変わり、クラスの雰囲気も大きく変わることができます。
※この記事は講師への研修と保護者会で何回かお話しした内容をまとめてもらったものの転載です。