【モデルロケットとは】高校生が作る“本物”のロケット、その仕組みと挑戦

ロジムに7歳のころから通っている橋本龍之介くん率いる、東京都立小石川中等教育学校モデルロケット班が「ロケット甲子園2024」で見事優勝し、今年6月にパリで開催される世界大会への出場が決定しました!

ロジムでは、そんな彼らの軌跡を深掘りしながら、知られざる挑戦の裏側や世界大会に向けての取り組みを、ブログシリーズとして発信していきます。


「モデルロケット」とは、火薬エンジンを使って上空に打ち上げる、小型の科学教材ロケットです。紙やバルサ材、プラスチックなどの素材を使い、手作りで設計・製作します。

教育目的で世界中に広まっているこのモデルロケット。実は、小学校の理科でよく見かける「ペットボトルロケット」とは一線を画します。都立小石川ロケット班をはじめとした活動では、本格的な火薬エンジンを使用し、安全に配慮しながら高度90〜200m以上まで飛行可能なロケットを打ち上げています。

特徴
  • 小型ロケットの教育用教材として使われる。
  • 紙やプラスチックなどで作られている。
  • 火薬を用いた本格的なエンジンを動力源とし、本物のロケットに近い構造。
  • ペットボトルロケットとは異なり、安全性や精密性が求められる競技性の高いロケット

高校生によるモデルロケット競技は、科学技術や工学的な知識を実際の設計・製作・飛行に活かす「学びと挑戦の場」です。競技では以下のような種目が行われます:

  • 高度競技:ロケットが到達した高度の正確さを競う
  • 滞空時間競技:パラシュートによる滞空時間を競う

日本では、安全管理のために「日本モデルロケット協会(JAR)」のライセンス(通常は4級)が必要とされており、技術面の教育も厳しく指導されています。

モデルロケット全国大会(対象:年齢制限なし)

春・秋にJAXA筑波宇宙センターで開催され、150名ほどが参加。小型機体(20~30cm)での高度や滞空時間を競います。小石川ロケット班は2022年から本格参戦し、2024年秋の第45回大会では高度競技で1〜3位を独占、滞空競技でも2位となり、見事総合優勝&準優勝を果たしました。

ロケット甲子園(対象:中学生〜高校生)

大型機体(65cm〜1m)を用い、3〜10人のチームで挑戦。50チームほどが参加します。宇宙飛行士に見立てたロケットに生卵2個を搭載し、既定の高度に達した後、卵を無傷で回収できるかを競う競技です。

モデルロケット全国大会ロケット甲子園 決勝大会
開催年2回 春・秋年1回 8月
対象年齢制限なし
(モデルロケットライセンス保持)
中高生対象
(チームのうち1名以上がモデルロケットライセンス第3級以上を保持)
出場形式選手1~3名、サポーター1名以内選手3〜10名
大会参加数選手150名程度11チーム
ロケットの大きさ20cm〜30cmの小型ロケット60cm〜1mほどの大型ロケット
参加費用選手1名あたり¥6,000
(エンジンとリカバリーワディングは持参)
1チームあたり¥70,000
(エンジン費用)
競技内容例高度競技・滞空時間競技卵を搭載した機体で目標高度・滞空時間・安全着地を競う
技術的な難易度飛行性能・軽量設計の精度が求められる高度な安全設計・落下実験など、より複合的な技術が求められる
評価される力正確なシミュレーション力・軽量設計・飛行制御力衝撃制御、安全性設計、複合的な実験と分析力
その他JAXA筑波宇宙センターで開催地方予選ののち、決勝大会へ出場

小石川ロケット班は2025年2月、初出場にしてこのロケット甲子園でも優勝を達成。日本代表として世界大会(IRC)出場を決めました。

国際大会「IRC(International Rocketry Challenge)」は、アメリカ・イギリス・フランス・日本の代表チームが集う、世界的なモデルロケット競技です。2024年は英国で開催。航空ショーの一環として、世界の航空宇宙関係者が見守る中、競技が行われました。

ルールは国内大会と共通する部分もありますが、世界大会では 毎年異なる特別ルール が設けられます。2025年のルールでは、「モデルロケットの上下で太さに違いを持たせること」が求められており、設計の自由度と難易度がさらに高まっています。

左の写真は、実際のモデルロケットで、国内用(左)と世界大会用(右)となっております。
2025年ルールの、「モデルロケットの上下で太さに違いを持たせること」に対応した仕様のロケットです。

また、競技はロケットの打ち上げだけではありません。世界大会では 英語でのプレゼンテーション(質疑応答含む) も審査対象であり、「打ち上げの技術力:60%」「英語での発表力:40%」の割合で総合評価されます。まさに、科学・技術・英語コミュニケーションの総合力が問われる国際的な舞台です。

参加国は4カ国。中でもアメリカは、国内モデルロケット大会の優勝チームが ホワイトハウスに招待される ほどの国民的注目度を誇り、国を挙げてのサポート体制が整っている強豪国です。

引用:一般社団法人日本航空宇宙工業会 特集 2023年10月第858号より:https://www.sjac.or.jp/pdf/publication/backnumber/202310/20231002.pdf

特徴
  • 出場国:アメリカ、イギリス、フランス、日本
  • ルールの特徴:毎年ルールが変更される(2025年は「上下で太さを変える設計」)。
  • 評価項目:打ち上げ:60%英語によるプレゼンテーション(質疑応答含む):40%
  • アメリカではモデルロケットがメジャー競技として認知され、優勝者はホワイトハウスに招待されることもある


そのような世界の強者たちと肩を並べ、ルールの読み解きから設計・実験・英語のプレゼン準備までをすべて自分たちの手でこなす――。
小石川ロケット班の挑戦には、まさに「総合力で世界に挑む」姿勢が表れています。

日本において、モデルロケットはまだあまり知られていません。大学でもモデルロケットに取り組む研究室は全国で6校ほどにとどまり、競技に関わる支援の輪も限定的です。特に世界大会出場となると、交通費や機材費を含めた大きな資金が必要となり、支援金が集まりにくいという課題があります。

しかし、こうした困難を乗り越え、日本代表として世界に挑む高校生がいるということは、日本のSTEM教育における希望でもあります。小石川ロケット班の挑戦は、「ロケット=特別なもの」ではなく、「自分も挑戦できるかもしれない」と思わせてくれる、そんなメッセージに満ちています。

今回、ロジムでは班長である橋本龍之介くん(ロジム在籍生)の挑戦を応援するため、特設ページを立ち上げ、彼らの活動の記録をブログ形式で発信していくことにしました。

全国優勝、そして世界へ。
一人の中学生の「ロケットを作りたい!」という想いから始まった挑戦が、いま、空を越えて世界に届こうとしています。
彼らの挑戦を、ぜひ一緒に応援してください。